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ショックバイタルの基本4種と病態不明時の初期対応

2022 10/20
解剖生理など
2022年10月7日 2022年10月20日
ショックバイタル4病態、初期対応
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ショック状態の患者さんに遭遇したとき、ショックに陥った原因や初期対応がわからずに困ったことはありませんか?

とくに初期段階ではなぜショックに至っているのかわからない場合が多々あるため、ショックの病態や原因別の治療について理解されている方でも、対応に苦慮することがしばしばあります。

実は初期段階でショックの原因病態がわからなくても、初期対応はパターン化することができます。

なぜならショックに至る原因は様々でも、病態は4種類に集約できるからです。その4種類のどのタイプであっても、最初にやるべきことは決まっています。

私は現役の循環器専門医としてこれまで多くのショック状態の患者さんに対応してきましたが、いつも本日解説する考え方をもとに対応してきました。

この記事では、

  • ショックの基本的な病態4種と、病態別の初期治療
  • 病態・原因が不明なときの初期対応

について解説します。

この記事を読むとショックの患者さんに遭遇したときに落ち着いて対応できるようになったり、対応する医師の考え方がわかるようになったりします。

学生さんや看護師さん、研修医・専攻医の先生方まで得るものがある内容となっています。

この記事の内容はYoutubeでも公開予定です。

目次

ショックとは

ショックでは以下のような兆候が認められます。

ショックの5徴
  1. 顔面蒼白 (Pallor)
  2. 虚脱 (Prostration)
  3. 冷汗 (Perspiration)
  4. 呼吸不全 (Pulmonary insufficiency)
  5. 脈拍触知不能 (Pulseless)

これらはショックの本質や定義ではありませんが、ショック状態の患者さんを速やかに発見するための重要な所見です。

ショックの定義

ショックの定義は「酸素供給の減少、酸素消費量の増加、不十分な酸素利用、これらのどれかまたは組み合わせによる細胞および組織の低酸素状態」となっています。

まずは循環不全により組織の機能障害や細胞死を生じうるものと覚えておけば十分です。

最初は「血圧が低くて死んでしまいそうな状態!」というイメージするのも悪くありませんが、ショックの初期段階では代償機構(心拍数増加・末梢血管収縮など)により血圧が保たれていることもあリます。

「低血圧ではないからショックではない」とは言えないということは注意しておく必要があります(実際、ショックの5徴に低血圧は含まれていません)。

ショックによる影響

ショックによる影響は最初は可逆的ですが、急速に不可逆的になり多臓器不全から致命的となる可能性があります。

そのため

  • ショックの徴候を見逃さないこと
  • 速やかに適切な治療を行うこと

が重要です。

先ほど提示したショックの5徴

ショックの5徴
  1. 顔面蒼白 (Pallor)
  2. 虚脱 (Prostration)
  3. 冷汗 (Perspiration)
  4. 呼吸不全 (Pulmonary insufficiency)
  5. 脈拍触知不能 (Pulseless)

はショック状態を速やかに発見するための指標ですのでぜひ覚えておいてください。

言葉を覚えようとするだけでなく、この様な患者さんの状態をリアルにイメージしてみると記憶に残りやすいです。

若手看護師さんがこのような患者さんを発見したときは、

  • 速やかにリーダーへ報告する
  • 病棟コールを行う
  • MET(Medical Emergency Team)へ連絡する

など、病院ごとにルールが決まっていると思いますので、実際の動きも確認しておいてくださいね^^

病態解説

ショックには様々な種類がありますが、以下の4つに分類されます。

ショックの病態4種
  1. 血液分布異常性ショック
  2. 心原性ショック
  3. 循環血液量減少性ショック
  4. 閉塞性ショック

それぞれのショックの病態を、血圧変動に影響を及ぼす3要素(心機能、循環血液量、末梢血管抵抗)の観点から解説します(3要素についてはこちらの記事で詳しく解説しています)。

血液分布異常性ショック(distributive shock)

末梢血管抵抗の低下(血管拡張)により引き起こされるショックです。

血管拡張により血管床面積が拡大(末梢血管抵抗が低下)して血圧が低下します。

末梢血管が拡張することで、

  • 四肢末梢へ分布する循環血液量が増加し、
  • 体幹や中枢に分布する循環血液量が減少します。

名前の通り、「血液分布異常」が起こっています。

血液分布異常性ショックを起こす具体的な病態として、

  • 敗血症性ショック
  • 神経原性ショック
  • アナフィラキシーショック

などがあります。

アナフィラキシーショックと敗血症性ショックでは、末梢血管拡張だけでなく血管透過性も亢進していることから、後述の循環血液量減少という要素も併せもっています(血管透過性についてはこちらの記事で解説しています)。

血液分布異常性ショックに対する初期対応

下肢挙上

下肢の血流が低下して体幹に血液を集めることで、主要臓器への循環血液量を増やします(血液分布異常を是正することに寄与します)。

昇圧剤(ノルアドレナリンなど)

血液分布異常性ショックの本質は末梢血管拡張ですので、末梢血管収縮作用を持つ昇圧剤は理にかなった治療です。

急速補液

相対的に血管内容量が不十分となっているため、急速補液で循環血液量を増加させることも有効です。

心原性ショック(cardiogenic shock)

心機能の低下・不調により引き起こされるショックです。

心原性ショックとの名前の通り、心臓が原因です。

  • 急性心筋梗塞を発症し心収縮能(EF)が急激に低下した
  • 突然、頻脈性不整脈や徐脈性不整脈が出現した

などのように、心機能や心拍数などが理由で心拍出量が低下してショックを呈します。

心原性ショックに対する初期対応

心拍数の適正化

不整脈により心拍数が速すぎる・遅すぎることが問題である場合に行います。薬物療法・体外式ペースメーカー・電気ショック(カルディオバージョン)などが含まれます。

昇圧剤(ドブタミンなど)

心収縮能の低下により循環不全を呈している場合は、昇圧剤(強心作用のあるドブタミンなど)や大動脈内バルーンパンピング(IABP)などの補助循環装置を要することがあります(IABPに関してはこちらの動画で解説しています)。

心原性ショックの患者に急速補液を行うと、心不全が悪化して心原性肺水腫(急激な呼吸不全)をきたすことがあるため、鑑別が必要です(後ほど補足します)。

循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)

循環血液量が少ないことにより引き起こされるショックです。

脱水や出血(出血性ショック)などにより、末梢循環不全をきたします。

循環血液量減少により拡張期血圧・収縮期血圧とも低下する機序については、こちらの記事で解説しています。

循環血液量減少性ショックに対する初期対応

下肢挙上

下肢の血流が低下して体幹に優先的に血液が集まるため、主要臓器への循環血液量を保持することに寄与します。

急速補液・輸血

根本的な原因は循環血液量が少ないことなので、点滴補液で循環血液量を満たすことは理にかなっています。また外傷などにより急激に出血したことが引き金になっている場合(出血性ショック)では、輸血も考慮されます。

閉塞性ショック(obstructive shock)

心臓の充満や駆出を阻害する物理的な要因によって引き起こされたショックです(血圧変動に影響を及ぼす3要素が原因ではありません)。

イメージとしては、ポンプ自体の機能は良くても、

  • 外からポンプの仕事を邪魔されたり、
  • 川の流れをせき止めるダムのせいで、その先のポンプまで十分な水が流れてこないようなものです。

閉塞性ショックをきたす代表的な疾患は以下の3つです。

  • 心タンポナーデ
  • 緊張性気胸
  • 肺塞栓

心タンポナーデ

心嚢に液体成分が貯留することで、心臓を外から押さえつけて心臓の動きを制限されている状態です。

心臓は、心外膜という膜で包まれており、心外膜と心臓の間のスペースを心嚢(しんのう)といいます。

心嚢に液体成分が貯留すると、心臓が十分に拡張できなくなり、心拍出量が減少してしまいます。

心タンポナーデの治療

心嚢ドレナージ

心嚢に貯留した液体を排出することで、心臓を圧迫する物理的要因を解除します。

緊張性気胸

胸腔内に過剰に空気が貯留し、静脈還流(全身から心臓に戻ってくる血流)を制限している状態です。

気胸により胸腔内に漏れ出た空気が肺に戻れずに胸腔内に過剰に空気が貯留して胸腔内圧が著明に上昇することで、静脈還流(全身から心臓に戻ってくる血流)が制限された状態です。

心臓に戻ってくる血液量が少なければ当然拍出できる血液量も少なくなり、心拍出量が減少してショックとなります。

緊張性気胸の治療

胸腔穿刺

胸腔内に漏れ出た空気を体外に排出(脱気)することで、胸腔内圧を低下させ静脈還流量を改善させます。

肺塞栓(エコノミークラス症候群)

肺動脈内に血栓などが詰まり、右心系から左心系への血流が障害された状態です。

典型例では、下肢静脈内にできた血栓が血流に乗って肺動脈につまることで起こります。

肺動脈が血栓でつまると、右心系から左心系への血流が低下し、その結果左心系から全身への血流が低下(心拍出量の低下)します。

肺塞栓に対する治療

抗凝固療法・血栓溶解療法

血液をサラサラにして詰まった血栓を溶かします。

人工心肺装置(PCPS、ECMO)

肺塞栓が重症(広範型)でショックを呈している場合は、血栓が溶けるまで待っている余裕がありません。状態が不安定な患者さんには補助循環装置を用います。

閉塞性ショックの原因は心臓の充満や駆出を阻害する物理的な要因なので、治療にはそれぞれの物理的要因を排除することが必要となります。

原因不明のショックへの初期対応

ショックの適切な治療は、ショックの種類(病態)によって変わってきます。

血液分布異常性

下肢挙上、昇圧剤、急速補液

心原性

心拍数の適正化、昇圧剤、IABPなどの補助循環装置

循環血液量減少性

急速補液、輸血

閉塞性

閉塞機点となっている物理的要因の排除

しかし実際は、状態が急速に悪化するため原因をゆっくり鑑別する時間的余裕がないことから、初期治療と病態把握を並行して行う必要があります。

具体的には以下の2つが重要です。

  • 初期治療として急速補液
  • 病態把握として心エコー
初期治療:急速補液
  • 循環血液量を増やし、血圧・循環を改善させる
  • 準備に最も時間がかからない
  • 心原性ショックなど、急速補液が望ましくないケースに注意
病態把握:心エコー
  • 心不全・肺塞栓を疑う所見が認められた場合は急速補液を控える
  • 脱水を示唆する所見が認められた場合は自信をもって急速補液できる
  • 閉塞性ショックに特徴的な所見がないかどうかを調べる
    • 心臓タンポナーデ:心嚢液貯留や右室の虚脱
    • 肺塞栓:右室による左室の圧排像
    • 緊張性気胸:片側胸腔内圧上昇による縦隔の偏位

まとめ

この記事ではショック(ショックバイタル)について解説しました。

定義:循環不全により組織の機能障害や細胞死を生じうるもの

ショック状態の患者さんを速やかに発見するためにショックの5徴が大切です。

ショックの5徴
  1. 顔面蒼白 (Pallor)
  2. 虚脱 (Prostration)
  3. 冷汗 (Perspiration)
  4. 呼吸不全 (Pulmonary insufficiency)
  5. 脈拍触知不能 (Pulseless)

はショック状態を速やかに発見するための指標ですのでぜひ覚えておいてください

ショックの病態4種と治療
  1. 血液分布異常性ショック
    • 下肢挙上、昇圧剤、急速補液など
  2. 心原性ショック
    • 心拍数の適正化、昇圧剤、IABPなどの補助循環装置
  3. 循環血液量減少性ショック
    • 急速補液、輸血など
  4. 閉塞性ショック
    • 閉塞起点となっている物理的要因の排除

初期治療と病態把握を並行して行う必要があります

  • 初期治療として急速補液
  • 病態把握として心エコー

もちろんこれらの初期対応に加えて、適宜追加精査・治療を行います。

皆さんの明日からの診療・看護などにお役に立てれば幸いです。

他の記事や動画でも、皆さんに役立つ情報を公開しています。ぜひアクセスしてみてください^^

Youtubeはこちら
解剖生理など
ショックバイタル4病態、初期対応

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ころくま
循環器専門医
専門研修ののち大学院へ進学。
卒後同大学の教官職を経てドイツ・ベルリンに約2年間留学。
Berufserlaubnis als Arzt(ベルリンでの医師としての就労許可証≒医師免許)を取得しカテーテル治療・臨床研究に従事。
帰国後は地域の中核病院に勤務しています。
座右の銘は
・臨機応変
・とりあえずやってみる
・何事も経験
Youtubeはこちら
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